
母は明るくて 美人ではないがチャーミングだったせいか いつも沢山の友人に囲まれていた
変哲も無い服も 母が着ると垢ぬけて見えた 自分の魅力を演出するのが上手かったのだろう
そんな母が男と出奔したのは 私が好きな金木犀の甘い香りが漂っていたから 秋だったと思う
父は紳士服の仕立ての仕事を自宅でやっていた 無口で穏やかな人 でも何故か 父の印象は薄い
実体はあったのに影であるかの様に 朧気な記憶しかない 本当に父は存在していたのだろうか
母が結婚したのが不思議だったが 違うタイプだからこそ 惹かれたのかと想像するしか無かった
父はそれから三年後に再婚して子供も生まれている 私達は全寮制の学校にいて交流も無かった
でも今になって思う 母は私達と父を捨てただけ 逃げずに責任を果たして来たのは父親の方だ
私が子供を持ったら決して捨てない これからは自分の考えで生きて行く 言い訳の人生も止めよう
自分の納得が大切なんだ いつか父親の話も聞いておきたいと思っている